茨城の不良債権たち file2

一発目の延滞債権は金坂さんの指示で、福島県との県境の一番遠いお客さんの家までクルマを走らす。

僕「ここらで合ってますかねー、周りなんにもないんですけど、、」

購入したてのナビゲーションを見ながら、広大な空き地を通る一本道を低速走行していた。

その時、

視界に徐々に表れてきたのは薄黒い4棟の5階建ての住居。確かに曇り空とはいえ、この団地一帯はどんよりしたまるでその場所だけ時が止まっている暗い陰気さを漂わせている。

「あーこれはひどいですね、アメリカの刑務所チックな感じの建物ですね」

数々の超下層住宅を見てきている金坂さんですらこの団地を見るなり驚いている様子だった。

特にビックリしたのは遠目からは気づかなかったドア毎に大きくペイントがされている番号だ。13とか14というふうに黒で数字が描かれている。まあ部屋番号なんだろうけど、何故にドアに大きく表記される必要があるのか。

はっきり言って、、、

こわい。

 

お目当てのお客は団地の一階だった。17番。普通ビルの一階というのは、たとえ一階であっても段差があり地面から少し高くなっているのだが、この団地は一階の玄関部分と地面(しかも土!)の境界がなく高さが同じだ。

一言で、、、

こわい(;゚Д゚)

 

チャイムはなかった。 コン コン ・・ あれっ えっ? 普通団地の扉って鉄のイメージだったけど、この扉・・もしかして木?

外壁をみるかぎりコンクリートで建てられていると思うけど、扉が木って、、、

こわい...

 

Iさんは出て来なかった。いるのかいないのかわからない。というよりも、この団地に人が住んでいるかもわからない。

広大な原っぱの中にポツンと出現するこの団地は車を所有しなければ不便で仕方ないだろう。かといって車が止まっているわけでもないし、駐車場すらない。

隣に住む人にIさんの聞き込み調査を行おうとした時、

ガチャ

隣のとなりのドアが開いてピンクの寝巻きを着た40代くらいの瘦せ細った女性が桶を抱えて出てきた。風呂上りなのか、髪は濡れタオルを首からぶら下げている。

・・人は住んではいるんだな・・

金坂さんがすかさずちょっとふざけた口調(志村けんのババア風)で、

「すみませ~ん、17号のお宅に訪ねてきたんですが、お留守なようで、こちらはIさんが住んでるんですよね?」

ピンク寝巻きの女 「住んでるよ」

金坂さん 「いつも何時頃だったらいるん・・」

ガチャッ、バタンッ。

ピンク寝巻きの女は無表情のまま家の中にまた入ってしまった。

両隣にも聞き込みしようとノックをしたが、人は出て来なかった。

・・一体この団地に住んでいる人たちは皆仕事をして生計を立てているのだろうか どんな暮らしをしているのだろうか..

次の訪問先に向かうことにした。

僕「ひどい団地でしたね」

金坂さん「そうですね、犯罪者の城のような」

時速80kmでとばす車のバックミラーには草原にポツンとたたずむ黒がかった団地がなかなか小さくならなかった。

 

      2023/07/10

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