サラ金配属（後半）Assigned to a consumer finance company (latter half)
まず金融の き の字もわからない僕は店長の指示でしばらく書面作りの仕事をまかされた。いわゆる督促状で、支払いが滞っている人のリストを横目にひたすら宛名書きをし、定型の督促状を封筒に入れて封をするという単純作業だった。
「そのやり方だと支払いが遅れている人からの連絡は来ないんですよね～」
横目で僕の督促状作成作業を見ていた金坂さんが話しかけてきた。
「えっ？何か間違えてますか？」
僕の質問に笑みを浮かべながら金坂さんは、僕の手元にあった作成済みの封筒の宛名のとなりに筆ペンを使い大きな字で文言を付け足した。
大変なことになっております。至急連絡せよ！！
男性が担当する債権回収の業務は、支払いが遅れて７日以内の初期延滞債権、支払いが遅れて一週間以上経過した中長期債権、法手続債権のお３つに分類され、それぞれ１人ずつ担当が受け持つ体制をとっていた。
僕は金坂さんに付き、新人が入り易い初期延滞債権を担当することになった。
サラ金会社の朝は早い。貸金業規制法により、顧客への督促は朝８時～夜９時と決められている。朝の８時よりたくさんの延滞顧客へ電話するには、延滞顧客リストを事前に出力し最も効率よく電話しなければならない。また、電話が繋がらない顧客はピックアップしておき、書面、訪問（取り立て）による回収を行う。
この準備の為新入社員の僕は朝７時前に誰よりも早く出勤した。
「Aさんのお宅ですか？」
「はい」
「わたくし株式会社信用ローンの鈴木と申し…」
ガチャッ．プー プー
ピポパポ トゥルルルルル、 トゥルルルルル
「Aさんのお宅で…」
ガチャッ．プー プー
ピポパポ トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、 トゥルルルルル、
むぅ～ (-_-;) 話にならないとはまさにこのことじゃないか。
ピポパポ、 カチ、 カチ、 カチ
お架けになった電話は電波が届かないところにあるか電源が入っていないため架かりません こちらはNTTドコモです…
ピポパポ、 カチ、 カチ、 カチ
お架けになった電話はお客様の都合によりおつなぎできません こちらは…
ピポパポ、 カチ、 カチ、 カチ
お架けになった電話は番号は現在使われておりません
(；ﾟДﾟ)
…なんだこれは！？ 誰とも話すこともできないじゃないか！…
延滞常習者はお金がないのでまず電話が繋がらない。そして、繋がったとしても、、
「Tさんですか？今月の支払いの確認が取れないので電話しました。すぐに入金してもらえませんか？」
「あー信用ローンさんね。わかってるけどよぉ。今月無理。まだ取引先からの支払いが来月にならないと入らないんだよ。来月には入るから待ってくれよ」
何かとつけて言い訳をしてくる。言い訳パターンは大きく３つある。
・無職で仕事がみつからない
・自営の仕事がうまくいってない
・年金暮らしで金がない
First of all, as someone who didn't know the first thing about finance, I was tasked with creating documents by the store manager. It was a simple task of addressing envelopes and putting standard reminder letters inside to people who were behind on payments, all while glancing at a list of those individuals.
"You know, that way you won't receive any calls from people who are late on their payments," said Mr. Kanazawa, who had been watching me create reminder letters out of the corner of his eye.
"Huh? Did I do something wrong?" I asked.
Smiling at my question, Mr. Kanazawa used a brush pen to add a message in large letters next to the address on one of the already created envelopes in front of me.
"Urgent contact required!! Something serious has happened."
2023/07/10