茨城の不良債権たち file5

茨城訪問4件目 港町のツワモノF

次は海岸で貝を売って生計を立てているオバちゃんFだ。電話で話したことはあるが、会うのは初めて。

催促の電話をすると、「今忙しい」といつも切られる。

まさか今日千葉から取り立てに来ているとは本人は夢にも思わないだろう。

例のごとくFの店に向かう車の中から携帯で電話を架けてみる。

「Fさんですかー?」

「忙しいから!」

ガチャッ、プー プー

 

Aさんの家から車を走らせること50分、塩の香りがする港町に着いた。

僕「近隣調査だと、ここらへんですよねー?」

金坂さん「そうですね、元々住宅地図に載ってないですからね」

海から少し離れた錆びれた商店街でFさんの店の場所を聞くとすぐにわかった。

「あーその三件先の赤い雨どいのついてるお店だよ」

行ってみると2人のオバちゃんがせかせか働いている。ただ単に貝を売っているのではなく、店は奥行きがあって、中には食堂のようなこともしていた。そして、お客さんも3組ほど入っていて繁盛しているようにみえる。

「いらっしゃいませー!」

僕たちのことを客と思っているオバちゃんは甲高い声を出す。

僕「Fさんですか?」

「はい」

僕「信用ローンですけど」

「あっわかりました」と言うとすぐに店の奥にスタスタ歩いて行き、お札を手に持って戻ってきた。女は皆女優というのはよくいったものだ。借金取りが突然来たにもかかわらず、顔色一つ変えずに返事をして周りのお客さんに勘繰られないよう即座に平静を装う。

僕「いや、いつもの二千円じゃなくて、本来の支払額13,000円払ってくださいよ」

Fさんは返事もせずにまた店の奥に入り、すぐにまた戻ってきた。

僕「13,000円お預かりいたします。はい、受取書(領収書)です。あと、Fさん携帯電話持ってますか?自宅の電話は止まっているみたいだし、店に電話してもいつも忙しいってすぐ切られるし。教えてくださいよ」

Fさん「持ってないです。払ったでしょ、お金」

と言い捨て、調理場にいるもう一人のオバちゃんに『仕入れはどうなってるんだっけ?』とその場しのぎの声かけをしながら早歩きで引っ込んでしまった。

 

5件目のTさんは不在だった・・プレハブ平屋の仮設風住宅だった。

支払が滞納している家を見るといつも寂しい気持ちになった。それはボロボロの外観のせいなのか、自分も将来こういう生活を送りたくないという心情からなのか、 おそらく両方なんだろう。ありったけの訪問通知をドアの隙間とポストに入れ、昼間の訪問で不在だったフィリピンパブ道楽男Oさんの家に向かうことにした。

 

 

      2023/07/10

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