怒涛の集金ラッシュ file4
今朝15件あった未回収不良債権は、夜には4件になっていた。つまり9件が取り立てに成功していた。もちろん全てが満額回収ではなかったが。
僕たちは最後の訪問先であるTさんの家に向かって、東関東自動車道を高速で突っ走っていた。
僕「金坂さん、マズいです、Tさんの家に着くの21時回っちゃいますよ」
金坂さん「ぜんぜーん余裕です。むしろ早いくらいです。久しぶりにTと会うから何か買っていってあげましょうか、食べ物でも(笑)」
基本、現代風に表現するならデフォ、Tさんへの取り立ては貸金業規制法圏外だった。
書面、訪問並びに隣人、親戚への執拗なまでの情報収集は他の不良債務者たちよりも悪質な面で群を抜いていた。僕自身、朝駅前で配りきれない大量のティッシュを段ボールごとTさんのアパートの玄関の前に置いて、須崎店長から大目玉をくらうなんてこともあった(なんて無駄なことをするんだと)
しかし、Tさんはそんな嫌がらせは全く効かない債務者だった。言い換えるならば常識とはかけ離れた次元にいる存在、それがTさんだった。
2023/07/10